杉原吉直氏インタビュー|WORLD PAPER ARCHITECT AWARD 2022

越前和紙の産地を代表して審査員を務める『杉原商店』代表取締役社長・杉原吉直氏。“和紙ソムリエ”として越前和紙の文化や歴史の魅力を国内外に発信し続けている。

越前和紙が1500年間もつくられ続けているその理由を伺った。

建築資材として多用される越前和紙

 このお話を伺ったときに、知識を得ようとしている学生の皆さんに、和紙と建築を絡めたイベントは純粋に楽しそうというイメージでした。さらに大阪・関西万博が絡んでくるとなると、この第1回は次につながるいいPRになるのではないでしょうか。

 越前和紙はふすまをはじめとして以前から建築資材としてよく使われていました。5~6mもの紙を毎日のように⼀枚で漉ける技術も、日本では越前にしかありません。さらに不燃材としての登録もできましたので、より建築の世界に使われることが多くなるのでは、と思います。そうなったのも、いろんなものを受け入れる度量の深さに加え、「まずやってみよう」というチャレンジ精神が旺盛であることが挙げられます。

1500年続くからこそ良い意味でこだわらない。

 ともすれば「越前和紙とはこうあるべきだ」という考えが蔓延しかねないのですが、良い意味でこだわらないという風土に溢れていると感じています。時代のニーズに合わせ、作家やデザイナーが「こうしたい」という思いに「作ってみるか」という実行力で応えてきました。

 そう言えるのも、1500年間積み重ねてきた技術が残っているからです。さらに越前和紙の産地、と言っても、全員が紙漉き職人というわけではありません。漉いた紙を加工する会社も数多くあり、⼀つひとつの会社や職⼈が独自の技術を有しているという多様性を持っています。そうした技術集団が連携し合ってきたことで、新しい越前和紙の形をつくり続けてきたのです。

環境負荷の低い和紙の、文化と歴史を学んで

 そして何よりも、和紙は環境負荷が低いというのが特徴です。そもそも紙とはリサイクルからスタートしてできたものです。麻で編んだ服や漁網が使い古され、繊維が適度に細かくなって紙となっていったのです。さらに越前では1500年前の川上御前が伝えたときから同じ製法で作ってもいますので、元々電気を必要としなくても作ることが可能なのです。そこから日本は独自に改良を重ね、麻から楮・三椏・雁皮などで作るようになり、正倉院にも保管されているような1000年保存できる紙をつくり上げてきました。

 そのような歴史が、この町にはたくさん詰まっています。今回の「世界ペーパーアーキテクト大賞」では、制作の中で和紙を使っていただきますが、そうした歴史的背景や文化の変遷を知った上で作ると、なおこのイベントに参加することに面白さを感じると思いますよ。是非越前に足を運んでみて、紙の文化を体験してみてください。

審査委員

杉原吉直氏

越前和紙の産地・越前市今立において明治4年より続く和紙店『杉原商店』代表取締役社長。インクジェットプリンター用和紙『羽二重紙』を開発するほか、“和紙ソムリエ”として世界中の建築物や美術家の和紙を手掛け、2016年「三井ゴールデン匠賞」大賞受賞。2019年には外務省「日本ブランド発信事業」として世界各国で講演するなど、国内外で和紙の魅力を提案・発信し続けている。