建築家 小堀哲夫氏インタビュー|WORLD PAPER ARCHITECT AWARD 2022

今回記念すべき第1回目となる「世界ペーパーアーキテクト大賞」、審査委員長を務める建築家・小堀哲夫氏に、このイベントの魅力と可能性を伺った。

ものづくりのDNAを呼び起こして、是非このイベントに参加してみては。

誰もが親しみのある紙で「つくる」

 人間のものづくりは二足歩行が始まった頃に遡ります。手が自由になったことで創造力が生まれたわけですね。つまりものづくりの能力は、古代から今に至るまで、万人に備わっているものです。

 今の時代、服にしても車にしても、食でさえもほとんどが「買う」という行動に終始していて、「つくる」という行動が少なくなってきている中、建築は「つくる」なんです。「つくる」感動は小さい頃から誰もが経験してきたことです。特に今回は紙を使うということで、折り紙など2次元のものから3次元のものを立ち上げてきた記憶もあって、ものづくりの素材として親和性が非常に高いと思います。

自信を持って「つくる」ことが大事

 今回建築物をつくる、ということで難しく考えがちですが、〝立体のものづくり〞と捉え、心の中から溢れるものをぜひ提案してください。整ったものをつくろうとするのではなく、ものづくりという行為そのものを大切に、自信を持ってつくってみてください。小さい頃から皆さんは折り紙で立体のものを作ってきた経験があるはずです。そのときの記憶を思い出し、手を動かしてみましょう。

 紙の建築物とはどういうものかを検索するよりも、手の先から自然と生まれてくる感覚を頼りにつくりあげたほうがよっぽど意味のある作品ができあがるでしょう。頭の中を知識で一杯にするのではなく、夢でワクワクすることで一杯にしてほしいと思います。

WPAAは時代にマッチしたイベント

 このイベントでは越前和紙を使うことがルールになっていますが、和紙ほど多様性を感じる素材はありません。大量生産で均一化した紙が主流になってしまいましたが、和紙はその真逆、均質化しない美しさがあります。今は多様性から包括的という言葉、つまり多様な人々を包むことをイメージした和紙はその象徴のようなアイテムで、WPAAは時代にマッチしたイベントだと感じています。

 私自身日華化学株式会社さん、あわら温泉べにやさんと関わることで、福井が第2のホームベースとなっています。このイベントは日本海側から世界に発信できる、つながっていけるきっかけになりますから、自分自身もワクワクしています。北陸はものづくりにおいては技術の歴史も高さもあります。それに元々が大陸とのつながりが深いから、いわば最先端の都市だったはずです。そのDNAは間違いなくありますから。

審査委員長

小堀哲夫氏

日本建築家協会(JIA)および日本建築学会(AIJ)会員。法政大学教授。代表作に「ROKI global innovation center」、「NICCA INNOVATION CENTER」、「梅光学院大学 CROSSLIGHT」などがある。2017年度には、建築家に与えられる二大建築賞、AIJ(日本建築学会)の日本建築学会賞、JIA(日本建築家協会)の日本建築大賞(JIA grand prix)をダブル受賞した。同年内のダブル受賞は史上初となる。

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