中島さち子氏インタビュー|WORLD PAPER ARCHITECT AWARD 2022

大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーの中島さち子氏が、第1回「世界ペーパーアーキテクト大賞」の審査委員として期待するものは何か。

専門分野であるSTEAM教育の観点からもお話を伺った。

五感や身体性を使ったプロセスも楽しい創作

 紙を使って建築物をつくることは、五感や身体性、アイデアなどを通して創作することであり、「過程そのものが楽しいだろうな」というのがWPAAの第一印象でした。

 「いのちが輝く建築物」というテーマは、2025年開催の大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に大変近いものがあります。そして私が担当するテーマ「いのちを高める」は、「遊びや学び、スポーツや芸術を通して、生きる喜びや楽しさを感じ、ともにいのちを高めていく共創の場を創出する」というものです。

 実は、関連性の高いテーマを持つ本イベントと大阪・関西万博が、何かの形で連携できないかと考えているんですよ。

あらゆる知の交錯がつくり手の喜びに

 私が携わっているSTEAM(※)教育とも、このイベントには通じるところがたくさんあります。STEAM教育は、未来の価値をつくる人の喜びと自信を育む学び方を重視しており、身体性や文化を大事にしています。WPAAの「越前和紙を使うこと」は、そこに大きく関わっています。

 また、何よりも「つくること」は、そのこと自体を通して学ぶことができます。制作過程では、工学や科学あるいは数学など、さまざまな分野の知や技術を使うでしょうし、人の気持ちや哲学的なことも考えるかもしれません。ありとあらゆる知が交錯するような体験から、つくり手としての喜びが見えてくるのではないでしょうか。

“すべての人が建築家”未来をつくる仕事の体験を

 「越前和紙=伝統的なもの」と「現代の人」がかけ合わさると、新しい伝統が生まれ、未来が変わる可能性もあります。

 建築家は、大事にしたいもの、つまり思想を具体的な空間として表現する「形にできる思想家」です。その作品には将来的に人が入って未来につながるので、まさに未来をつくる職業。とは言っても、特別な人だけが建築家になるわけではありません。ロンドン万博の「水晶宮」や、パリ万博の「エッフェル塔」のように、生粋の建築家ではない人がつくった建築物が今に残存しています。私は“すべての人が建築家である”と思っています。

 あまり敷居を高く感じることなくWPAAに参加して、そんな仕事を体験してほしいですね。テーマを通して、「いのち」や「いのちが輝くこと」について、自分の観点でのびのびと解釈や表現を追求してください。上手下手ではなく、情熱があって人の心を動かす作品を期待しています。

※STEAM
Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Arts:芸術・リベラルアーツ、Mathematics:数学の頭文字で、創造的・実践的・横断的でプレイフルな学び方、ワクワク(興味・関心)を軸とした「創る」と「知る」の循環を指す。

審査委員

中島さち子氏

大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー (「いのちを高める:学び・遊び・芸術・スポーツ」) 。国際数学オリンピック金メダル受賞。東京大学理学部数学科卒。NY大学芸術学部ITP修士 (メディアアート) 。ジャズピアニストでありながら数学研究者であり、科学・技術・工学・芸術・数学を融合した「STEAM教育」に取り組んでいる。株式会社steAm代表取締役。内閣府STEM Girls Ambassador。