越前和紙が彩り続けた歴史は⽇本の歴史そのもの|WORLD PAPER ARCHITECT AWARD 2022

越前和紙が彩り続けた歴史は日本の歴史そのもの

今から約1500年前のこと。川上から女性が降りてきて、紙漉きの技術を伝えた「川上御前伝説」が越前和紙の始まりです。1500年前から変わらない製法でつくられている日本最高峰の和紙は、日本の歴史を記録し続け、彩り続けています。

大陸との交流が生んだ技術

なぜ福井で1500年前から紙漉きの技術があったのかというと、大陸との交流が実はあったからなのです。大陸から船で漕ぎ出せば、潮の流れで福井に辿り着きます。仏教伝来以前から大陸の文化をいち早く取り⼊れていたと考えられるのです。

そして越前和紙が全国区になったきっかけが14世紀の南北朝の乱でした。紙漉きの産地は南朝・新田義貞軍に付き戦いに敗れます。しかし敵軍の将・足利高経は奉書として素晴らしい越前和紙を全国の武将に広めることとなりました。

権力の象徴としての和紙

紙質が悪いとニセモノが出回ります。だから良質な紙を使うことは権力の象徴でもありました。越前和紙の産地・今立地区は⼀か所にまとまっているので製法や秘密が漏れにくく管理しやすいため、武将たちは今立地区を大切に守ってきたのです。

江戸末期まで幕府に守られてきた越前和紙。福井藩出身で明治政府初の大蔵大臣となった由利公正(ゆりきみまさ)は、日本初の紙幣「太政官札」を越前和紙でつくり、その後に誕⽣する日本銀⾏券も、和紙職人が指導に当たっていました。まさに越前は日本紙幣の故郷なのです。

世界が認めたSDGsな越前和紙

越前和紙は海を渡り、17世紀の画家・レンブラントも越前和紙を使用していたことがわかりました。横山大観から始まり、平山郁夫、現代では武田双雲に漫画家の井上雄彦、大きな紙を漉くことができる越前和紙は愛され続けています。

長い繊維を使い、無数の空気の層を持ち、熱伝導率が低く、断熱性が高い。光を透過・拡散させ、細かいゴミはキャッチ、紫外線はカット、調湿効果も抜群で製造に電気も必要としない越前和紙は、まさに万能でSDGsな素材なのです。

今回の最終審査会場は、越前和紙の産地・越前市今立地区で開催。今後も毎年開催を行なうことで、建築の楽しさを伝えていく。